漏洩まんが祭り

漫画・ゲーム・映画・怪奇の備忘録と虚無の日記

相手が鯨じゃでかすぎるョ/『怪怪怪怪物!』

 12月の新メニュー「黒うどん」の材料調達ため、近所の公園の砂場へ赴く。黒うどんというのはその名の通り真っ黒なうどんで、麺に砂鉄を練り込んである。栄養面と喉越しの強化はもちろん、食べた後に磁石を腹に近づけることで、ビクンビクンと動くうどんが官能的な胃触感をもたらす。砂鉄はすでに酸化しているため、柑橘系のつゆと合わせても水素を発しないのも利点と言える。完成のあかつきには丸亀製麺にプレゼンし、新たな香川名物としてアピールしてもらうつもりだ。さあ、忙しくなるぞ~! と息巻いていたが1億2000万の所得隠しが明るみに出てすべてを失い、変わり果てた姿で発見されたという。

 


 

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 アマプラで『怪怪怪怪物!』観る。台湾製の学園スプラッターホラーだが、グロ度はかなり控えめ。苦い青春、ブラックユーモア、モンスターへの憐憫と憧憬が混然一体となった、笑えて泣ける大傑作であった。

 高校生のリン・シューウェイ君は、ウェイ系のクラスメイトからゴミカスのように扱われる壮絶なイジメを受けていた。スピリチュアル系の担任教師は完全に見て見ぬふり、地獄絵図のような毎日を送っていたが、ある日ウェイ軍団と共に介護ボランティアに訪れたアパートで人食いバケモノの女の子をGET。こいつを捕まえておけばいろいろアレできるゼと、ウェイどもと共通の秘密を得たシューウェイ君。バケモノには人権は無いから何しても大丈夫だよネと、歯を引っこ抜いたり弱点の日光に晒してウギャアアアと苦しむさまを眺めたり、自分より下の立場の者ができたことでホッと安堵する。バケモノの血は感染するらしく、スピ系教師に飲ませてみたところ、日の光を浴びたとたんブリブリブリと大量に下血したあげく燃えて死んだ。
 邪魔物も消えてハッピー学園生活をエンジョイしていたシューウェイ君だが、怒りに燃えたバケモノの姉が妹を探しまわって大殺戮を開始する。ウェイどものカキタレ女も罪もない生徒もすさまじい勢いで死んでいった。このまま黙って殺されてたまるかと、ウェイどもどシューウェイ君は、バケモノ妹を囮に姉をブチ殺す作戦を計画する。

 観客が感情移入すべき立場にあるはずの主人公がすさまじい勢いでクソ人間と化していき、言い訳にもならない言い訳で自己を正当化していく過程がリアルで痛々しい。強者と弱者、人間と怪物、果たしてどちらがどちらなのか。青春の不安定さを巧みに突くストーリー展開。ラストシーンの“解放”感はちょっとやそっとの作品では得難いほどのもので、このラストだけでも満点に近い。必見。

秘密兵器は赤い風船/『時計じかけのオレンジ』

 気圧が下がるとテンションも下がる~!! 鬱々っていうか何もしたくねぇ~!! という気分になる人がいるようだ。いるようだも何も自分がそれで、頭痛などが起きることはあまりないが、特に理由もなく悲観的になり布団かぶって数時間寝てしまいたくなる。これはもちろん日本政府の陰謀で、感受性の豊かな人間にのみ影響を与える化学物質を低気圧の中心に放り込んで拡散させているのだ。みたいなことをマジのマジで信じている人もいるので、普段から冗談のつもりで吹聴していると仲間認定され、フォロ爆されたり消印の無い手紙が届いたり午前5時に電話がかかってきたりする。彼らには迷惑していたものの今やすっかり打ち解け、週末はバーベキューやレプティリアン狩りに興じる仲である。

 


 

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 午前10時の映画祭で『時計じかけのオレンジ』。観賞は20年ぶりくらい、スクリーンで観るのは当然初めて。有名作であるしあらすじ等は省くが、ビジュアルが本当スゴいですね。衣装も美術も、オシャレと悪趣味を積み重ねたビッグマックのようなコテコテさで素晴らしい。

 あと記憶してたよりもエロかったのと、アレックスの肺活量が凄いのと、老作家の演技がギャグ寄りなのは発見でした。それに出所後のアレックス、緊迫した状況にも関わらず風呂に入りながらゴキゲンで「雨に唄えば」をフルコーラスしたり、アホみたいな顔して大臣にごはんをモッチャモッチャ食べさせてもらったりしてるのが普通に可愛いかった。萌えキャラ。

お母さん助けて! 恐怖の生中継/『新感染 ファイナル・エクスプレス』

 コンビニのイートインで小学1・2年生くらいの女の子がひとりで食事しているのを見た時は「孤食児童! これでいいのかニッポン!」という気がしないでもなかったが、別にあれは好きでやってるのかもしれないしな。子供のころの買い食いってそれ自体が楽しかったし、イートインのスペースもこれでなかなか快適なものだ。充電できるし、食べ物はいくらでもあるし、こうやってホットスナックをつまみにフォーナインを空ければ我が家のようにくつろげるし、こうやって靴を脱ぐのも自由だし、歌を歌うのも自由だし、服を脱ぐのも自由だし、とかやってたら普通にマッポ呼ばれましてね。その時投げつけられたカラーボールの染みが鬼の貌に見えるってんで、仲間内じゃオーガと呼ばれとります。

 


 

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 『新感染 ファイナル・エクスプレス』の続編がクランクアップしたというニュースを聞き、そういや『新感染』観てなかったなと気づきネトフリで観賞。B級丸出しの邦題に反し、今さらおれ如きが何か付け加えることもないような傑作で、記録と記憶に残るゾンビ映画の新定番。
 子供とどう触れ合っていいかわからない社畜パパ、妊娠した妻を支えるけんかっ早い熱血おじさん、素直に恋愛感情を表に出せない野球部員とマネージャー、人生達観気味の老姉妹、とにかく自分の保身第一のいけ好かない中年、任務に忠実な運転手、なにやら事情を知っていそうな謎の浮浪者風の男…。壮大な死亡フラグを立てまくる個性的なキャラ連がとにかく強烈。他にも 最初から最後まで落ちることのないテンション、シチュエーションを「新幹線」にしたことで生まれた閉所ならではのスリリングな展開や赤の他人である乗客たちが交わるドラマ性とかなんとか、ヒットの要因はいろいろ考えられるんですが、一言で言えば「マ・ドンソクが強い」。これが最高。ゾンビ相手でも素手でボコボコぶん殴り、圧倒的な強さを見せつけるけど、素手だから案の定という。人間、こうありたいものですな。生存者たちの生きざまと死にざま、どちらも印象深いシーン満載。あと妊婦走らせ過ぎ。

復讐のヘアピンサーカス/『クロール -凶暴領域-』

 最近、ラグビーというものを見る機会が増えた。おれの記憶の中でのラグビーは、確か「頑丈なプロテクターを装備する」「相手に肩から思い切りぶつかっていく」「守備側は攻撃側を体当たりしてでも止めなければならない」「ボールはピッチングマシンで撃ち出す」「選手交代は不可能」「試合中に相手を死なせてもOK」「銀河でいちばん人気があるスポーツ」みたいな印象だったのだが、どうもいろいろと勘違いしていたようだ。
 しかしまあ日本でのワールドカップ開催がなかったら、ラグビーについてこんなに観たり知ったりする機会はなかなか訪れなかったに違いない。世界大会はどんなジャンルの何であれ、積極的に行ってもらいたいですね。マイナーな競技でもいいじゃない、スポーツスタッキングとかジターリングとかコッパメンとか。コッパメンはまあ私が考えたオリジナル競技ですけどね。地面に丸い文様を描き、その中で太った男2人がぶつかりあって先に体勢を崩した方が負けという…もうある? 似たようなのがあるのか。でもコッパメンは斬新な要素もたくさんあって、例えば審判は烏帽子に袴姿というオリエンタルなスタイルで、軍配を持って「はっけよいのこった」の掛け声で場を仕切るという…それももうある? そうなんだ。へえ。

 


 

 auマンデーなので『クロール -凶暴領域-』を観に行ってきまんた。制作はサム・ライミ、監督は『ピラニア3D』のアレクサンドル・アジャという豪華布陣。女子大生のヘイリーが家に帰ったらオヤジは地下室で大けがしてるし、カテゴリー5の台風が接近してきて家は今にも沈みそうだし、なお悪いことに近所のワニ園から逃げ出した大量のワニがうろついているからた~いへん、という災害パニック+アニマルパニックの美味しいどころ取りの欲張りムービー。主要人物は2人でセリフのある人物を含めても10人おらず、シチュエーションはほぼ家の地下室というこじんまりした雰囲気とは言え、小細工抜きでワニの怖さを直球に描いた理想のワニ映画ではないでしょうか。そりゃまあところどころに見られるやり過ぎ感や、この手の映画お約束の主要人物タフ過ぎ問題などはあるけれど、いまやキワモノ・ゲテモノが当たり前のこの界隈では正攻法すぎるくらいで「ワニ映画の新たなマスターピースを作るんや!」という想いはビンビン感じられる力作です。台風とワニが出てくる映画つったら空からワニが降って来るようなの想像するし。
 主人公が水泳の選手というのも、この手の映画ではありそうで意外とないタイプの実にまっとうな特技と言える。パニック映画に出てくる水泳選手ってだいたい死にますからね。そうでもないか。『ポセイドン・アドベンチャー』だけだなそれ。

ガラスのスーパーロボット/『あむんぜん』平山夢明

 風邪で鼻づまりしているのでアタマが働かず、ぼんやりしているうちに1週間過ぎてしまった。いま流行っている風邪はどうも喉と鼻にクるらしいですね。私もこうやって鼻毛を抜こうとするとホラ、子持ち昆布と同じ仕組みで大量のハナクソが鼻毛と一緒に取れるんですよ。ほら。ほら見て。(ヌロン) 出てきた出てきた! うわあ。まるで松前漬けみたいじゃないですか! などと生鮮食品売り場で実演していたら激怒した店長のラリアットが喉元を直撃、ふらついた隙を副店長に抱え上げられボディスラムからの脳天叩きつけで失神しそのまま店外へ叩き出された(6分28秒)。まさか、この一連のムーヴが台風を鎮める唯一の儀式だったとは…。

 


 

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 台風に備えて万全のアレをアレしていたので家に籠りっきり、インドアに過ごす。平山夢明『あむんぜん』読了。いつにも増してバカバカしい短編集であり大変良い。
 チンパンジーに強姦されすべての尊厳を失った男の悲喜劇「GangBang The Chimpanzee」。脳みそを直で押したりぐにぐにされることで超能力を発揮してしまう少年と、脳いじり役の少年の交流を描く「あむんぜん」。うんこを食べるタイプのAVに出演せざるを得なくなった女と男のほのかな恋物語ファンタジー「千々石ミゲルと殺し屋バイブ」。ヤク中の小便を蒸発させればヤクを回収できるのでは?という組長の思い付きで小便を煮続けることになってしまったヤクザの逃走劇「あんにゅい野郎のおぬるい壁」。“鶴の恩返し”をヒド過ぎる形で翻案した異能刑事ドラマ「報恩捜査官夕鶴」。無職の地下アイドルオタクがいかにして最悪からのV字回復を成し遂げたのかを描く「ヲタポリス」

 平山夢明の短編は、だいたいにおいて“最悪の状況”にある老若男女が出てくる。その最悪のバリエーションの広さには舌を巻くし、ハッピーエンドなのかバッドエンドなのかムチャクチャのほったらかしで終わるのか毎回予想もつかない。まあただ今回は前述の通り“バカ”“無内容”に振り切れており、他人事ながら心配になる傑作でした。

ガイコツ砦の決斗/『HiGH&LOW THE WORST』

 昨日から微妙に喉が痛いので、大事を取って葛根湯を飲む。インフルエンザも流行っているようだし風邪とは限らないのだが、早めの葛根湯は本当に効く。初手で潰せる。しかし風邪を引くような心当たりは無いのだがなあ。

 あとヴィックスドロップも舐めたし、喉にいいハーブティーも頂いたので万全ですね。夕食は昨日に引き続き、好物の釘ぢくわ(ちくわに釘を詰めた郷土料理)です。

 


 

 『HiGH&LOW THE WORST』観てきた。良かった…本当に面白かった。1本の映画としてのまとまりの良さでは歴代最高ではなかろうか。「WORST」どころか「HiGH&LOW」をまったく知らない人が観ても満足できるアクションだと思う。そんな人がこの映画を観に来るかどうかはわからんが、なんの前知識も無しに『HiGH&LOW THE MOVIE』を観て情報の奔流にブン殴られたかのような感じを覚えて、それからシリーズにハマった人も多いと聞くから大丈夫でしょう。今作の主人公・花岡楓士雄はシリーズ初登場の新キャラなので、イチからちゃんと背景とかを説明してくれるので初見でもマジでぜんぜん問題ないです。かなりわかりやすい少年漫画的な主人公なのでスッと入り込めるし。
 あ~もう語りたいとこいっぱいあるな。相変わらずどうやって撮ってんのかわかんねえレベルのアクションとか、鬼邪高vs鳳仙のスデゴロをたっぷり見せた後にどうやってクライマックスを盛り上げるんだ? と思ったら絶望団地戦では凶器振り回す連中が相手で敵も味方もムチャクチャ度がアップしててすげえよなとか、いちばん役どころおいしいのは沢村では?とか。『HiGH&LOW THE MOVIE』にあったイビツな部分を丁寧に取り除き、かつパワーダウンしていない丁寧な仕事といった印象。なんか普通にもんじゃ食いたくなったな。は~良かった。

殺人光線銃完成の巻/『ゴジラ』(84年度版)

 自分が出る必要があるのかないのか、よくわからん打ち合わせで45分ほど浪費。ぐったり。相手に貰った名刺の「デジタルマーケター」という肩書、パソコンとかに対して「負ーけたー!」って土下座しているオッサンしか思い浮かばないからむしろデジタルに弱そうだよな、などと考えながらぼんやりしていた。
 …「ワシがデジタルマーケターじゃ!」 今日もチンポを出したる! と気合十分の全裸中年男性は公衆トイレで隣の男性のモノを見つめ、「負ーけたー…」と一言つぶやいて意気消沈したまま連行されていった。(完)

 


 

 『ゴジラ('84)』をひさびさに鑑賞。おれが覚えている限り、もっとも古い「映画館で観た映画」である。確か父と2人で行ったんだっけな。父はわりと特撮が好きだったようで、「昔は『変身忍者嵐』を夢中になって見ていたもんだよ」などと語っていたが、あとで調べてみたら『変身忍者嵐』放映時の父は20歳近かった。もっと夢中になるべきものがあるだろ。

 それはそれとして『ゴジラ('84)』。当時見た時は冒頭のショッキラス(ゴジラに取りついていたフナムシが巨大化したもの)のインパクトが強すぎたせいかそれしか覚えておらず、ゴジラの印象がまるで無い。で、今回観なおしてみたらそれもしょうがねえだろうな~としか言いようのない、地味な映画であった。こりゃガキにはつらいよ。

 めちゃくちゃ雑にまとめてしまうと「つまらない『シン・ゴジラ』」である。リアリティを出そうとしてケレン味をすべて犠牲にしてしまったというか。なんか知らんけどゴジラが復活、劇中では「あのゴジラが!」つって、みんなはもうゴジラのこと知ってるよネという前提で話が進むので置いてけぼり感がある。そりゃ観客はゴジラの事は知ってるだろうけど、リブート作品でそれをやる? 実写パートはとにかく地味で、総理を含めた政治家連中の国をまたいでの駆け引きとか、やりたかったことはわかるけどなあ、って感じ。特撮は悪くない。ゴジラがすぐそこまで来てるのに呑気に運航しているヘリコプターだの新幹線だのが「案の定」な末路を辿ってくれる。ていうかこの世界の都民は全体的にゴジラ舐めすぎ。

 あとはまあ…空飛ぶ掃除機ロボにしか見えない超兵器「スーパーX」とか、誰一人心に残らない登場人物の中で1人気を吐く武田鉄矢の存在感だとか、足を滑らせて死ぬゴジラだとか、「グッバイゴッジラ~、グッバイゴッジラ~、サヨナラ何とかフフ~ン」とかいう脱力する歌詞のエンディングとか、負寄りの見どころはまんさいだったと思います。

 なんだろうなあ。怪獣が現れて、その怪獣の生態をもとに対処法を探していく…という原点回帰を強く意識したような流れなど、見どころがないわけじゃないのだが。特撮の派手さをすべて覆い尽くすレベルで本編が地味であった。