「くっ、殺せ…! 貴様らのような外道に弄ばれるくらいなら、誇り高き死を選ぶわ!」 共同農場のスイカやパクチーを勝手にむさぼり食っているところを見つかり、村人数人にボコボコされながらも誇りは失わない全裸中年男性。まきざっぽでブン殴られ、地面に押さえつけられながらも屁で反撃するなど孤軍奮闘したが命運尽き果てる。水を飲ませようとすると「感度3000倍になりゅううううぅぅ!!」と叫んで大騒ぎするので縄でグルグル巻きにしてそのまま川に放り込まれたという。
「で、あなたが川を流れていた全裸中年男性を助けてあげたってわけね」
「ああ。しかし不思議なものだな。お前の顔を見ていると、あの時の全裸中年男性が頭をよぎることが何度もあったんだ。たまに思うんだよ。お前はあの時の全裸中年男性が、恩返しに来た姿じゃないかって」
裁縫の手を止め、振り返る妻の目は涙に濡れていた。
映画「モータルコンバット」観に行く。おれより先に奥さんが観に行っていたので「ネタバレすんなよ!」とか言っていたのだが、その心配は不要だった。ネタバレするほどのシナリオではないので…。脚本の偏差値の低さは「ゴジラvsコング」以上だろう。タイマンバトルの連続だけで話が進む原作(格ゲー)を忠実に再現しすぎた内容で、そもそもタイトルの「モータルコンバット」という人間界vs魔界の格闘大会は最後まで行われない。「モータルコンバットに出場する選手を大会の前に殺すヨ!」という魔界側の暴走に対して浅野忠信が「やめようネ!」つってたら死んだはずの真田広之が甦ったりしてかっこいいバトルを繰り広げる。それだけである。それだけで十分だ。個人的な好みを言えば、生身と生身のぶつかり合いバトルを存分に観られたぶん、ゴジコンより好印象であった。
原作ゲームは日本では不自然なくらいに展開がないが、本作の公開後なら「ボクもスコーピオンやケイノーを使いた~~い!」「名前忘れたけどサイコマンみたいな人の帽子かっこいい~~!」等の熱心な観客の声に推されて新作のローカライズが進んだりするのではないか。しないと思うけどしてほしい。しろ。