「こりゃ数年は家でちゃんと仕事できる環境が必要だな」とよ~~~~やく思い至ったので、ちまちま模様替えを進める。引っ越し以来、テキトーに使い続けてきたアルミラックをちゃんとした棚だのサイドボードだのに買い替え、収納スペースも有効活用するため、着ない服も思い切って捨てる。ただ、えらく手間暇かけてるわりに片付かねえんよ。いらない何も捨ててしまおう。君をなんとかマイソウル。
まあでも、極端な断捨離って悪影響を及ぼすこともあるんですよね。前のアパートに住んでた人、ダストボックスが溢れて体積2倍くらいになる量のゴミを突然出して、引っ越したのかと思ったら普通にガランとした部屋に住んでるみたいで。カーテンも無いから、だだっ広い部屋でぽつんと暮らしてるのが外から丸見えなんですよね。それだけならともかく、賃貸備え付けのエアコンだの換気扇だの靴箱だのもバラバラにしてゴミに出したりし始めたそうで。捨てる私物が無くなったから、部屋を少しずつ壊して捨て始めるようになったと。それでふざけんじゃないよって大家が殴り込みに行ったんですが、扉を開けたらそこには真っ白な壁と真っ白な床、そしてどこまでも続く地平線しかなかったということです。
篠原とおる『コードネーム348(サシバ)』Kinele Unlimitedで読む。アウトローな女刑事がいろんな犯罪をあれするという王道だが、いくらコードネームでも差し歯はダサ過では? と思ってたら、どこの部署にも籍を置かない流れ者という立場を渡り鳥のサシバ(差羽)になぞらえたというポエットな名前であった。正直サシバという鳥は知りませんでした。
下の鳥がサシバ。猛禽類の一種らしい
サシバこと羽生あすかは腕は立つものの他の刑事からは疎まれる立場で、孤高の存在としての魅力をたっぷり湛えているのだが、中盤からいきなり「情報屋の政さん」という知らん男がレギュラーキャラになる。やや小太りのガチムチ体形、女には弱いが気は優しくて力持ちというゲッター3のパイロットみたいな政さんは完全なコメディリリーフ。なにげに有能で彼の活躍がサシバの危機を救うことも多く、話の緊張感はだいぶ弱まってしまったが物語には幅ができて面白くなっている。
解説役として異様に有能な政さん
本作、というか篠原とおる作品全般の特徴として‟唐突なラスト”が挙げられる。事件が解決した直後に、エピローグだのなんだのをすっ飛ばしてそのまま話が終わってしまうので「えッここで!?」と思うことがよくある。「犯人が正体を現し、頭をピストルで撃ちぬかれてぶっ倒れたその大ゴマで終わり」という話が少なくないし、事件が解決しているならともかく、解決しそうなそぶりを見せただけで容赦なく「完」となってしまうことも多い。
「火喰鳥は飛んだ!!」で完
オッサンがミサイルに追いかけられている最中に完
話のいちばん盛り上がるところだけさえ描ければあとは不要! という理屈はわかるんだけど、そういうオチの話が続くと余韻もへったくれもねえなという気にならなくもない。
※以下ネタバレ※
そんなブツ切りの終わり方がプラスに働いている例もある。例えば6巻1話「天使の死角」はラストの2コマでこれまでのすべてがひっくり返り、そのまま放り出されて終わるという非常に印象的、かつ後味の悪い傑作エピソードだ。
とある団地の砂場で幼児が埋められ、殺害される事件が発生。母親が育児放棄ぎみの荒れた生活をしていたことを知り、サシバと政さんは母親とその愛人に話を聞くべく行動を開始する。
話の展開自体はかなり素直。そもそも、サシバと政さんが出っ張ってくるまでもなく、警察も母親を重要参考人として睨んでいたので推理要素も無く、サシバがわざわざ担当するような難事件でもない。すべてがラスト1ページのどんでん返しに向かうための前フリである。ほんと、この1エピソードだけで自分にとってはかなり印象深い作品となってしまった。