実家のクワガタ農家から久々に母が上京。私立大学を受けるいとこの付き添いとのこと。北陸の天気だの実家で同居を始めた叔父の話だの、今年のさなぎの出来だのいろいろ聞く。
夕食は母を連れ、新宿の天ぷら屋「つな八」総本店にて。一足早く、春らしいふきのとうなど揚げてもらう。白魚は海苔が巻いてあり、芳醇な磯の香りがクセになりそう。大吟醸もじつに合う。イカは歯ごたえがありクルマエビは柔らかい。海老天がこんなに柔らかいなんて…。天つゆに塩、わさび塩、ゆかり塩、異なる味わいが楽しめるのもよい。隣の席が日本語のわからなさそうな外国人カップルだったのをいいことに「クワガタの幼虫はカブトムシの幼虫に比べると臭みがまったくないので、天ぷらにもピッタリのはず」等の話をガンガンしていた。仮にあの外国人カップルが素性を隠して日本の天ぷらを調査に来たエージェントか何かだった場合、新メニュー開発のヒントになったかも知れぬ。
『開田さんの怪談』1、2巻読む。『フランケン・ふらん』『名探偵マーニー』の木々津克久の新刊。ややチャラ目ながらも凡庸な高校生・生瀬くんが気になるのは黒髪メガネのクラスメイト・開田さん。なんとか話のきっかけを作りたい生瀬くんだったが、どんな話題からもスムースに怪談につなげてしまう開田さんの話術によって毎回血も凍るようなグロ話を聞かされてしまうのであった。
たいていは生瀬くんを怖がらせたい開田さんによるからかいの一種としてオチが付くのだが、2巻以降はガチな怪奇が混じって来る。生瀬くんを翻弄する開田さんの「創作」が、悪意ある「真実」に侵食されていく展開にぞくっとさせられる場面も。オーソドックスなホラー読み切り連作に、ちょこちょこ見えるトリッキーさが後を引きます。