漏洩まんが祭り

漫画・ゲーム・映画・怪奇の備忘録と虚無の日記

史上最悪の3日間/『クトゥルー怪異録 極東邪神ホラー傑作選』

 奥さんは体質的にまったく酒がダメなので、酒という文化というか、酒自体についてあまり知らない。正月、酒が切れたのだがあまり強いのを飲む気分でもなかったため、コンビニに行く奥さんに「ストロングゼロ以外のチューハイ、なんでもいいから買ってきて~」と頼んだところ、氷結ストロング(9%)を買ってこられました。うん。これは100パーセントおれが悪い。オカンがメガドライブPCエンジンファミコンと呼称するのと同じだしな…とはいえ、貴様それでも帝国軍人かッ! そこに直れ、精神注入棒にて成敗してくれる! と噴き上げてみたものの、そのまま秒速で返り討ちに会い、ケツに注入棒とやらを挿したまま「母ちゃん堪忍や」と烏山通りを泣き追いかけまわされる中年男性の姿が目撃されたと聞きます。

 


 

 本棚整理のために積読本を消化しよう…と思い立っては、たいして読み進められずにうやむやになるという作業を年6回くらい繰り返してます。そういう経緯で今読んでいるのが『クトゥルー怪異録 極東邪神ホラー傑作選』。
 ストレートな本家取りである『蔭州升を覆う影』(小中千昭)、1956年に描かれた和風クトゥルー神話の先駆けにて、“チュールー”という表記が新鮮な『邪教の神』(高木彬光)など、なかなかにバラエティに富んでいて飽きない。冒頭に収められた佐野史郎のデビュー作『曇天の穴』がまたすごい。とんでもなく回りくどい悪文なのだが、おそらくこれはわかった上でわざとやっているような気がする。氏の他の文章を読んでいないので断言はできないが、雰囲気の再現という点では本アンソロジーに収められた他の作家たちと比べても引けを取らない。

「ぶよぶよと定まらぬまま、丁度ナメクジの触手の如き突き出た眼球はピンポン玉大の寒天状で、長い耳も見当たらず、虹彩は赤くは無いがその白い体毛といい、おそらく野生のものであればその俊敏さはかくあろうと思われる故、間違いなくあれは兎だ。」

 わかりづれぇ~! わかりづらいのがわかりやすい~!! その他の収録作も50ページの中にハードボイルド、かつクトゥルーものの根底を覆すような設定が詰め込まれていて読んでいる方も「世界観~!」としか言えない『銀の弾丸』(山田正紀)、短編なのにえらいスケール感の『出づるもの』(菊地秀行)、史実と虚実の混ぜ合わせ具合が楽しい『闇に輝くもの』(朝松健)、やっぱこれが無きゃネの怪物総進撃地獄絵図『地の底の哄笑』(友成純一)と、外れのない作家陣が存分に各々のアレを発揮しております。