漏洩まんが祭り

漫画・ゲーム・映画・怪奇の備忘録と虚無の日記

空の贈り物

 妻が「ホットヨガ」なるものに通い始めた。ホットヨガ…? 言葉の響きからはダルシムかカレクックしか想起できなかったが、サウナ並みの湿度と温度の効いた部屋でヨガを行う変態減量行為の一種らしかった。おれのヨガ知識は『Wii Fit』で得た程度しかないが、あれは確かにストレッチ的なものが主で激しい運動ではないだろうし、汗をかく環境で行えばそれほど体に負担をかけずに済みそうだなという気はした。

 今日は体験コースだったらしいが、まず「匂いのキツくないタイガーバーム」みたいなものを塗り込まれてマッサージを受ける。それから体をひねったり、変な方向にねじったり、水素水を飲んだりしながら汗を流すのだという。水素水を飲むためには通常のコースに加え、さらにオプション料金を付ける必要があるとのこと。なんだ、それは! 水素水といえば主に水分を補給するのに効果大と言われる神の水…。大いなる大地からの恵みを分与するのに追加で金銭を要求するとは! やめろやめろ! そんな銭ゲバスタジオは! そう叫びながら妻に手刀を繰り出すものの、すべて避けられてしまう。両手を地に付けた妻は下半身を大きく反らせ、左脚をおれの下半身、右脚を肩から首にかけての上半身にがっちりと食い込ませ、背骨をヘシ折るかのようにバックブリーカーを極めてこう叫ぶ。「ガンジスブリーカーッ!!」

 「あ~っと、これは…とても正義超人の所業とは思えません!」遠巻きに聞こえる実況の声が、だんだん薄れていく。光輝くが如き技の冴えを見せつつも、妻の顔は残虐な笑みに満ちていた。鮮烈に照らしはするけれど、決して暖めはしない――その姿はまるで、真冬の太陽のようだった。