漏洩まんが祭り

漫画・ゲーム・映画・怪奇の備忘録と虚無の日記

【日記】46億年の亡霊/『走れイダテンキング!』牛次郎・左近士諒

 新年度になってから妙に忙しく、自律神経をアレしたりで精神的にキツかった。仕事以外のアウトプットが、5月16日におそらく開催されるであろう第三十二回文学フリマの原稿で占められていたので日記書くヒマも無かった。あったけど。モンハンライズやってたので。

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 相変わらず『ウマ娘』三昧というか奥さんのほうがハマっており、最近は競馬新聞を買ったり馬券買うための口座を開いたりしている。競馬でプラスになった分を10連ガチャ等につぎ込めるなら永久機関完成だがそううまくいくものでもないらしい。

 おれも素人なりに競馬新聞を読んで予想を立ててみたりしたが、漢字や記号がたくさんあってよくわからなかった。なんでもいいから50万円ほど儲かる馬券を最速で教えろや! こっちは切羽詰まっとん! とブツクサ言っているうちに、くっきりとした姿が見えているわけではないけど、おぼろげながら浮かんできたんです。46という数字が。これぞ天啓じゃ~~~~ッッッ!! と閃くやいなやウインズまで疾走、なけなしの46円を手にして「これで買えるぶん適当に見繕ってくれや」と絶叫しながら固く閉じられたシャッターを殴打。緊急事態宣言下の街にはいつまでも、ガシャンガシャンという音が響いていたということです。

 いつまでも、いつまでも…

 


 

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 それはそれとして、見る人が見ればパドック(レース前のおウマさんがちんたら散歩する場所)でウマの様子を見るだけでもかなりのヒントを得られるらしい。すごいンゴねぇ~。おそらくはこれまでの各ウマのレース結果だの騎手の成績だの、競馬新聞に書かれていることも含めたあらゆる情報を精査すればかなり予想の範囲を絞り込むことができるのだろう。配当は予想に費やした時間への対価なのかもしれぬ。いや、こういう考えかたは我ながら斜に構え過ぎのような気もしてきた。もっと熱い競馬魂、『ウマ娘』とはまた別ベクトルの野獣のようなソレを補充しなければ…。

 で、Kindle Unlimitedで手に取った『走れイダテンキング!』は牛次郎原作の競馬コミック。パチンコをはじめギャンブルにも造詣が深い牛次郎だが、競馬漫画はどうも本作1作きりしか手掛けていないらしい。『包丁人味平』『プラレス3四郎』『やる気まんまん』等、多大なハッタリとサービス精神に満ちた「いっぷう変わったバトルもの」を得意とする牛次郎。そんな彼が紡ぎ出す競馬の世界とは? と期待しながら読んだのだが、どうにもペースが乱れた珍妙な作品であった。 

 

 主人公・英騎は競馬狂の父親に育てられ、自らも騎手となるも新馬戦で落馬。怪我を負ったウマは薬殺されてしまい、英騎の心に傷を残す。 騎手になれなかった親友の涙、先輩騎手とのいさかい、危篤の婆さんをほったらかして競馬場に来たあげく大穴を当てたショックで発狂したジジイ(本筋とは一切関係ない)などスリリングな描写が続く序盤はかなり読み応えがあり、満を持して登場するイダテンキングとの出会いもなかなか運命的で盛り上がる。

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 「狂うもののないやつのほうが よっぽど気の毒にみえるぜ!」名言。

  このままの勢いで突き進んでくれれば熱血ピカレスク競馬劇画として傑作になったのかもしれないが、英騎が馬主の娘さんと急に恋仲になってしまう辺りから話はヘンな方向に向かい始める。夜の競馬場観客席で娘さんに発情してしまった英騎(その間、ターフをかけるイダテンキングの幻影まで見る始末)は、何者かに行為の最中をバッチリ撮られてしまう。半人前のくせに色気づいてんじゃねえと先輩にメチャクチャ怒られたあげく、今度は酔いつぶれた先でスナックのママの色香にハマり、またもやスキャンダル写真を撮られる。なんと馬主の娘との種付けを撮影したのもママの一味であり、英騎は写真をネタに八百長を迫られてしまう。ていうか恥ずかしい写真どっちか1枚でもよくない?

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 八百長!!

 このイマイチ競馬とは直接関係のないハニートラップの話がだらだらと続き、なんにも解決しないまま英騎はイダテンキングの特訓を始める(電気ショックを与えたりする)。これどうやって始末つけるんだ? となった頃、知り合いの競馬記者がユスリ先のチンピラに「君! 写真のネガを渡したまえ!」と言ったら「ムム~っ、記者はまずい!」と観念したチンピラが素直にネガを返してくれて無事解決した。そんな簡単に諦めるのかよ。

 この後はようやくライバル騎手が登場して菊花賞や有馬記念でしのぎを削る王道展開になるのだが、どうにも地味と言うか煮え切らない大人しい展開が続き、特に盛り上がりもなくそのまま連載終了してしまった。やや唐突かつ不自然な「女性がらみのトラブル」を挟んでせいで失速した感は否めないが、序盤の盛り上がりはかなりのもので、キャラのセリフもモノローグも作画も構図も全編通して見ごたえはある。競馬漫画としてもマイナーな位置の作品だとは思うが、読んで損はしない。