漏洩まんが祭り

漫画・ゲーム・映画・怪奇の備忘録と虚無の日記

死さもなくば破滅/『ゴッド・アーム』梶原一騎・桑田次郎

 牛丼屋がくさかった。
 肉や脂の臭いではなく、酸っぱい異臭がする。汚い豚骨ラーメン屋のような…というか、まあ純粋に風呂に入ってない人の臭いである。なんなんだ。客が臭いのか店が臭いのかもよくわからない。
 周りを見渡せば冴えない風貌が多いし(自分は棚に上げて)客のせいかもしれないが、何も注文せずに出ていくのも悪い気がするしなあ。とは言え臭いものは臭い。
 というわけで、その日はハナをごまかすために黒カレーを食べた。これがリスクマネジメントというやつである。あと後日、ていうか今日同じ牛丼屋に行ったらやっぱり臭かったのでチーズ豚丼にキムチ付けて食った。これも我ながらさすがのリスクマネジメントである。(佐崎さんは正社員になった経験がないので、リスクマネジメントをトンチの一種か何かだと思っています)

 


 

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 桑田次郎『ゴッド・アーム』をKindle Unlimitedで読む。なんだかんだでよく利用しているアンリミ。最初は「『熱笑!花沢高校』読み終えたら解約していいや」と思っていたのだが、何かと読みたい本が途切れずに見つかる。わざとやっているのかと勘繰りたくなるぐらい検索しにくいけど。

 SFアクション巨編と謳っている『ゴッド・アーム』はいわゆるヒーロー物で、原作は梶原一騎。作画・原作ともに押しも押されもせぬビッグネームであることは間違いないが、梶原先生のSFマインドの無さのおかげで何とも珍妙な物語になっている。
 主人公はいつものカラテマンで、ナチスの科学者に撃たれて死ぬが「細胞100倍薬」で復活、ノーベル賞学者の父の手によって「ゴッド・アーム」として生まれ変わるものの、ナチスの脳を移植されて悪の手先となってしまう。この悪の手先になっている期間がやたら長いせいで、正義のヒーローとしての活躍があまり印象に残らない。なんやかんやあって、ゴッド・アームは生前の恋人が奏でるバイオリンの音を聴いている間だけ正気を取り戻せることが判明。むろんナチスは恋人を殺そうとするが、バイオリンの音をくり返し流し続けるラジカセを耳に取り付けることで、ようやくゴッド・アームは正義の味方となったのでした。キカイダーなら1話目で終わらせたようなこの設定を消化するのに、全5巻中の3巻を使っている。
 敵が繰り出してくるのは「ドリルが付いた戦車」「巨大化した動物」「ファイナル・ロボットなるコウモリみたいな鉄のカタマリ」といったどうにも絵にならない連中ばかりで、ナチスが実は宇宙人と手を組んでいたことが判明してからもイマイチ盛り上がらない。ようやく面白くなってくるのは最終巻の5巻からで、ゴッド・アームがここでやっと喋るようになる。それまでは一言たりとも言葉を発していない。彼の活躍の印象を弱める原因の1つと思える(喋らなかったのは恋人を悲しませたくないためとか、よくわからん理屈)。宇宙人は最終作戦として、邪悪な意思のパワーで上野の西郷さんや奈良の大仏を自由に操る暴挙に出る。ロケットのように台座から火を噴いて飛び回る西郷さんが目からビームを出して街を焼き払ったり、大仏が野球場を襲ったりするシーンは文句なしに面白く、なぜもっと早くこういうテンションの展開にならなかったのかと惜しまれるばかり。最後は宇宙人のボスをロケットに乗せて追放し(倒さんのかい)、ゴッド・アームも理由は忘れたが宇宙へ行ってめでたしめでたし。梶原が悪い。