漏洩まんが祭り

漫画・ゲーム・映画・怪奇の備忘録と虚無の日記

パンダを返して!/『クズとメガネと文学少女(偽)』谷川ニコ

  ペット葬儀社という、普段のおれとはあまり接点のない職業の方と話す機会があった。昔、ハムスターの葬儀を請け負ったのだが、依頼主のところへ行くと亡骸が存在しないという。広い公園に連れていき、芝生に放して遊ばせてやっていたらトンビか何かがサッと掻っ攫っていったとのこと。自然の掟やんけ。その件、最終的になにをどう葬儀したのかは聞きそびれた。
 あとは酒も入っていたので、キンギョやウズラの火葬についていろいろ不謹慎な展開になったので書かないが、まあずいぶん面白エピソードの多い仕事だなという印象。むろん酒の席で沈鬱な話はしないだろうが、「ペット葬儀に関する笑える話」なんてまず表に出てこないから新鮮でもあった。ヒトの葬儀をコメディタッチで描いた作品はいくつかあれど、ペット葬儀ギャグを扱った映画・漫画って思いつかないもんな(たぶんだが、よほどうまくやらないと炎上する)。ペット葬儀社同士の飲み会にでも行こうものなら、世に出ることのないおもしろ話がギチギチに煮詰まってゼリー状で漂っているのかもしれぬ。

 


 

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 谷川ニコ『クズとメガネと文学少女(偽)』2巻、これで完結だが最終回はとんでもないブツ切り。単行本ではちょっとしたエピローグが書き足されているが、いつでも再開できそうな終わり方です。
 高校生が図書室で文学談義をするという『バーナード嬢曰く。』と被りまくっている設定だが、どちらかというと本作はキャラ同士の絡みが中心で、文学作品はそのダシに使われているような扱い。とは言え、言及されている作品の良さはじゅうぶん伝わってくる。『悪の教典』買っちゃったよ。超面白いよ。三文オペラ検索しちゃったよ。
 本作の“文学少女”こと織川衣栞おりかわいおり(通称:おーり)はキャラ作りで文学少女っぽく振るまってるだけで、文学的素養ゼロの残念女子として描かれている(ドストエフスキーをアメリカ人だと思っている)。タイトルにある主人公3人のうち、ちゃんと本を読んでるのはメガネだけという惨状だが「おーりのようなドアホウでも楽しめるなら、おれでも読めるに違いない」となるし、ふだん本を読まない彼らの身もフタもない感想のやりとりも面白い。もっとこの調子でいろんな本を紹介してほしかったなあ。